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中国の風景

 2010年の6月上旬に、久しぶりに中国を訪問しました。今回は上海市内に滞在してフリー観光をし、上海から2泊3日の現地ツアーを利用した「桂林と漓江(りこう)下り」を楽しむ旅でした。帰国後、その風景を水彩ペン画で描きましたので、以前に描いた中国の風景と共に、『中国の旅』と題してまとめて掲載しました。 


上海市内

 上海では、市内の中心部にある明・清時代に造られた名園である「豫園」と、明・清時代の建物が建ち並ぶ郊外の古い街「七宝鎮」へ行きました。また夜には、黄浦江のほとりの外灘(わいたん)の散策および遊覧船で美しい両岸の夜景を眺め、また今年開催中の上海万博の会場へも夜1回だけ行ってきました。


豫園の楼閣

   上海市内にある観光スポットとして有名な庭園です。豫園の庭は明の時代(1559年)に四川省の役人・潘充端によって造られたと言われ、20,000平方メートルの敷地内には、貴重な太湖石の石組みを中心とした幾つかの小さな池泉回遊式の江南型庭園があったり、その傍らに大小の楼閣が建ち並んで池の水面にその影を映したりして、明・清時代の面影のある中国情緒を満喫することが出来ます。


豫園・打唱台と快楼

 豫園内は6つの区画に分かれており、曲がりくねった小径を歩いていると、大小の楼閣と小さな池のある庭園などが次々と現れます。この絵は、清朝末期の太平天国の乱の際に、武装蜂起した小刀会の本部が置かれた点春堂の向かいにある、池にせり出した「打唱台」という小さな舞台がある小さな池で、太湖石の石組みの上に小さな「快楼」の建物が見える場所です。


豫園・荷花池と湖心亭

   豫園の周辺は豫園商場と呼ばれる商店街があり、東京の浅草観音周辺の商店街のように、沢山のお土産屋や飲食店が建ち並んでいます。豫園の庭園入口前には荷花池がありますが、池の中心の湖心亭に向かって階段状に折れ曲がった九曲橋が架かっており、その上を大勢の人々が行き来していました。


古い水郷の街「七宝」

 上海市内から西の方へ向かう地下鉄9号線の七宝駅の近くにある水郷の街ですが、その歴史は古くて千年にもなると言います。明・清時代の古い建物の土産店や飲食店が南北大街に建ち並んでいて、臭豆腐や羊肉を焼く臭いが漂う狭い通りは大勢の観光客が行き交っており、また水路には観光用の小船が行き来していて、上海の下町情緒を味わえる場所です。近くに仏教寺院の「七宝教寺」があり、大きな七重塔や諸伽藍が建っています。


外灘(わいたん)の夜景

 上海市内を流れる黄浦江の外灘地区は上海随一の観光スポットで、華やかにライトアップされた夜の風景を、川沿いの遊歩道を歩きながら眺めて楽しむことができます。その両岸の夜景はロマンティックで大変素晴らしい眺めです。特に中山東路沿いの「バンド万国建築博覧」地区は、上海租界時代のいろいろな様式のレトロな洋館が建ち並び、壮観な風景です。現在これらの歴史的建物は銀行、商社、レストラン等になっています。


浦東エリアの夜景

 外灘の対岸は近年新しく開発された浦東地区で、発展が著しい現代の中国を象徴するような超高層建築が林立する地域です。展望台がある東方明珠塔テレビ塔や金茂大厦、ワールドフィナンシャルセンターなど500メートルにも及ぶ超高層ビルが建ち並んでいます。黄浦江を走る遊覧船上から、これらのホテル、オフィスが入っている高層ビル群の華やかな夜の景観が眺められます。


桂林と漓江(りこう)下り

 上海から中国の国内ツアーを利用して広西チワン自治区にある桂林を訪問しました。桂林の名は、秋になると桂花(モクセイ)の花が咲き乱れ、その香りが町中に漂うことから名付けられたそうです。市内の観光場所は桂林最大の鍾乳洞のある「芦笛岩」、象の鼻の形をした「象鼻山公園」、景勝地「畳彩山」への登山、駱駝山のある「七星公園」へガイドと共に行きましたした。二日目は漓江(りこう)下り遊覧船に乗って古い観光の街陽朔へ行き、繁華街の西街を散策し、「古榕公園」「高田郷」「月亮山」などの名勝地を観光した後、桂林へ戻る途中、少数民族の野外展示観光施設の「世外桃源](Shangri-La Yangshou)を見てきました。


漓江の山水画

 桂林近郷の無数にそびえる奇峰と漓江(りこう)の美しい風景は、「桂林山水甲天下」(桂林の風景は天下第一だ)という言葉があるように、多くの詩人や画人たちの魂を魅了し、多くの山水画や山水詩に描かれていますが、その風景にあこがれて今回念願の桂林と漓江下りへの旅をしましたが、その印象を色墨を用いて山水画として描いてみました。


象鼻山(象鼻公園)

 桂林市内を流れる漓江と支流の桃花江が合流する地点にある公園で、川の水を飲む象の鼻のような形の岩が河に突き出ています。付近には鵜飼いの小船が多く繋留されており、桂林市内の観光名所の一つとなっています。


駱駝山(七星公園)

 桂林の繁華街とは漓江を隔てて東側にある森林公園で、月牙山、七星岩、駱駝山などの岩山や、レストラン、鍾乳洞、動物園などがあります。この絵は駱駝(らくだ)の形をした駱駝山です。


芦笛岩鍾乳洞

 桂林市北西部のカルストの岩山にある最大の鍾乳洞で、2 kmほどの広い洞内に生成されている主な鍾乳石や石筍がある場所にはそれぞれ名前が付けられており、色つきの照明を点灯することによって自然の造形による見事な石灰像を見ることが出来ます。


九馬画山

 二日目は竹江から大きな遊覧船に乗って、漓江(りこう)下りをしました。漓江の流れに沿って両岸にそびえる沢山の奇峰や亜熱帯植物の森林、また素朴な農村風景を眺めながら約4時間の船旅を楽しみました。船から見える特異な形の岩山にはそれぞれ名前が付けられています。この岩山は興坪(しんぴん)近くにある「九馬画山」で、岩壁に9匹の馬が描かれているように見えることから名付けられたそうです。


陽朔西街

 船下りで幻想的な山水画の世界を楽しんだ後、陽朔の古い街を歩きました。陽朔は欧米諸国からの観光客が多く、西街の土産物屋やホテルの看板には英語の文字が併記されています。この地域に住む少数民族の民芸品を展示したり販売したりする店もあり、店頭で民族衣装を着たチワン(壮)族の若い女性が刺繍の実演をしているところを描きました。


陽朔郊外の「高田郷」の風景(1)

 陽朔の郊外には幾つかの名勝地があり、その一つの高田郷(こうでんごう)景区では、漓江の支流 遇龍河に架かる橋の上から、遠くに霞む奇峰をバックにして、太い孟宗竹を束ねた観光用筏が川に浮かぶ美しい桂林の山水風景を眺めました。


陽朔郊外の「高田郷」の風景(2)

 上の景色の右に続く風景で、古来から文人墨客たちが描いてきた南画の世界を堪能できます。この周辺には「穿岩古榕」「月亮山」「白沙鎮」などの奇観が見られる観光地が多くあります。


陽朔郊外の月亮山

 大きなガジュマル(榕樹)の樹がある「大榕樹公園」の近くにある穴の明いた岩山で、見る方向によってその穴の形が月の満ち欠けに似て、三日月形が大きくなったり小さくなったりして見えます。


「世外桃源」の風雨橋

 広西チワン自治区や雲南省には多数の少数民族が住んでおり、それぞれ独自の文化や風習をもっていますが、これらの文化や行事を紹介し、手芸品や産物などを展示販売している野外博物館が「世外桃源」です。施設内は小さな船に乗って、周囲の風景を眺めながら少数民族の村を見て回りました。この絵は施設内のトン(人偏に“同”の字)族の村にある屋根付きの「風雨橋」と呼ばれる珍しい橋です。


桂林のホテルからの展望

 桂林のホテルはコンドミニアムタイプの「桂林幸運酒店」でした。七星公園近くの高級住宅地にあり、漓江の支流が傍を流れていて、最上階にあるホテルのベランダからは桂林市内や遠くに連なる“山ほどもある”沢山の奇峰群を眺めることが出来ました。


その他の地域の風景

 10年から5年くらい前までの、まだ退職前だった頃は絵を描く時間もゆとりもない時でしたが、中国各地へ何回か行きました。そのとき訪問した江南水郷地帯(上海・蘇州間の湖水地帯)の明・清時代の古い村(古鎮)や、世界遺産の黄龍・九彩溝などの名勝地を訪問して、その風景を描いたものが若干ありますので、それらを掲載いたします。


江南水郷の村「周庄」

 周庄(Zhouzhuang)は蘇州の近くにある江南水郷を代表する古い村で、蘇州や上海などの近郊都市と結ぶ運河が発達し、古くから生活物質の集散拠点として栄えてきた運河の街です。水路の周辺は漆喰塗りの白壁と黒い瓦屋根の民家が軒を並べ、水路を跨ぐ400年以上も年を経た石橋と行き交う小舟が、昔の水郷商都としての面影を色濃く残しています。この絵は太平橋周辺の運河の風景を描いたものです。


古い水郷の街「朱家角」

 朱家角(Zhujiajiao)は上海市の郊外にある水郷古鎮で、36もある橋を渡り歩きながら運河沿いの道を散策できます。村の中の道には屋台や土産物店が並んでおり、民芸品や文化的な展示施設、および古い邸宅や庭園などを見ることができて、明・清時代の古い中国の雰囲気に浸ることができます。


「同里」の退思園邸園

 同里(Tongli)は蘇州に近い水郷の街で、縦横に運河が走り、古い橋が50もあるといいます。同里には明・清時代の大邸宅が多く残っており、中でも街の中心にある「退思園」は黒檀など最高の建材が使用され、窓や木戸の彫刻も素晴らしく、優雅な雰囲気を感じさせます。邸園は、太湖石で飾られた池に面して大小の楼閣が建ち並び、池に浮かんだような回廊がその建物をつないで、池を取り囲んで配置されています。


寒山寺の鐘楼

 蘇州には多くの寺院や芸術性の豊かな世界文化遺産に登録されている名庭園があり、観光の名所となっています。寒山寺は南北朝時代(西暦519年)に建立された禅宗の古刹で、唐代に禅僧の寒山が住み、また詩人・張継が詠んだ「楓橋夜泊」の漢詩の中に、寒山寺の鐘の音の句が出てくることでも有名です。


「九寨溝」の滝

 四川省の成都の北方400 kmの岷山山脈から長江の支流である白水江が流出していますが、その源流の一つが「九寨溝」(Jiuzhai Valley)であり、世界自然遺産に指定されています。石灰質の地層でミネラル分の多い水質が、澄み切った湖水の水をエメラルド色や青、紫等の鮮やかな色に彩っています。大きな滝も無数にありますが、この絵は「珍珠灘」の滝で、真珠の珠のような水玉を跳ね上げながら幅広く流れ落ちています。


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